2020.12.14
養育費を支払う義務があるのは何歳まで?離婚の際に取り決めよう

離婚の際、子どもがいる場合は親権や養育費、面会交流など、取り決めることがたくさんあります。
今後の生活を考えたときに、きちんと取り決めておきたいポイントの一つである養育費ですが、何歳まで支払われるものかご存知ですか?
養育費の支払いにはどのような義務があり、何歳まで支払われるべきものなのか、詳細をご紹介します。
~ この記事の監修 ~

青野・平山法律事務所
弁護士 青野 悠
夫婦関係を解消する場合、財産分与・養育費など多くの問題が付随して発生しますので、これらの問題を全体的にみて、より望ましい解決になるよう尽力します。
1. 養育費は何歳まで支払義務があるのか

養育費の支払義務は子どもが何歳になるまであるのでしょうか。
こちらでは、養育費とは何か、何歳まで支払義務があるのかなどを紹介します。
1-1. 法律で定められている「養育費」とは
養育費とは「子どもの養育に必要とする費用」のことで、子どもと離れて暮らす親(非監護親)が子どもと一緒に暮らす親(監護親)に対して支払われます。
養育費として支払われるものは、衣食住に必要となる費用や教育費、医療費などです。また、生活力に余裕がないとしても、子どもには非監護親と同じように暮らせる生活を保障しなければならない「生活保持義務」があります。
たとえば、失業や自己破産したとしても養育費の支払義務がなくなることはないのです。
養育費は、基本的に両親が話し合いをして取り決めをします。しかし、取り決められなかった場合には家庭裁判所に調停や審判の申立をして、取り決めを行うことになります。
もし、離婚時などに養育費は必要ないとしてお互いに納得していた場合でも、後々の事情によって養育費が必要となった際には、支払うように請求することも可能です。
1-2. 一般的には子どもが「成人」に達するまで
養育費は、一般的に子どもが成人するまで支払う義務があります。正確には、成人年齢とされていた20歳までとしているケースが多いです。
ただし、子どもの進学や心身の状況などによって経済的な自立が難しい場合は、成人後も養育費が支払われるケースがあります。
例えば、
- 進路をどのようにするか
- 親が20歳以降の養育費の支払いを望んでいるか
などによって変わります。
逆に、20歳未満でも養育費の支払いが終わる場合もあるので注意が必要です。
それは、高校卒業後に就職して、子ども自身が自分で収入を得るようになるケースです。その場合は、養育費の支払いは満18歳の3月までとなります。
ちなみに、子どもが2人いて満20歳まで養育費の支払いをする約束になっているケースで、1人が20歳・1人が16歳など年齢差があった場合はどうなるのでしょうか。
この場合、上の子はすでに20歳になっているので養育費の支払いを受けることができなくなります。しかし、16歳の子はまだ20歳まで4年ありますので、その間は養育費の支払いが継続されるのです。
1-3. 成年年齢の引き下げに伴う影響は
2022年4月1日から成年年齢を18歳へ引き下げる法律が施行されます。そのため、2022年4月1日時点で18~19歳の人は、この日より成年に達したことになります。
しかし、養育費に関しては取り決めの際に「満20歳まで」と決めていれば、成年年齢の引き下げに影響されることはありません。特別な話し合いなどで変更されない限り、必ず満20歳まで支払義務があります。
養育費は、あくまでも「子の経済的な自立を期待することができない場合に支払われるもの」です。
経済的に自立していなければ、成年になっていても養育費は支払うものであり、成年年齢の引き下げがあっても満18歳までしか支払わないということにはなりません。
2. 支払いについての取り決めはどうやって行うのか

ここからは、養育費の支払いはどのように取り決めをするのか詳しく紹介します。
2-1. 一般的には夫婦間の話し合いで決める
基本的には、離婚する夫婦の間に子どもがいる場合に話し合って決めます。
ちなみに、厚生労働省の「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果の概要」によると、離婚した夫婦のうち6割は養育費の取り決めをしていないという結果が出ています。
離婚後にも養育費の請求をすることは可能です。しかし、離婚時の状況によっては話し合いも困難になるケースがあるため、離婚前に決めておくほうが良いでしょう。
養育費を取り決める際には最低でも4つのことについてしっかり決めておくのがおすすめです。
まず、養育費の金額は必ず決めておくべきことです。
その際、一括か分割かについても決めます。一般的には月ごとに支払われるケースが多く、養育費の相場は、4~6万円です 。
子どもの1日の食費を1,000円とした場合、養育費で1カ月分の食費を賄える計算になります。もしくは、養育費をすべて貯金し、学費にまわすこともできます。
ほかには、「何歳まで支払うか」「支払期限」「支払方法」も決めておくべき点です。何歳まで支払うかについては年齢だけではなく、何歳の何月まで支払うなど具体的に決めておくほうが後々揉めないでしょう。
(参考記事)養育費の相場ってどれくらい?未払いを防止する方法ってあるの?
2-2. 取り決めた内容は「公的な書面」として残しておく
取り決めたことについては口約束ではなく、必ず公的な書面として残しておくことが重要です。
離婚協議書があるから大丈夫だと考えてしまいがちですが、実際にはそれだけではすぐに強制執行を行うための法的効力はありません。いざ、養育費の請求をしようとしても、改めて家庭裁判所で養育費のための調停を申し立てなければならないのです。
調停で話合いをしている間にも養育費は発生するため、調停期間中の養育費について、非監護親が暫定的な支払いをするケースがあります。
非監護親が暫定的な養育費の支払いを拒む場合、または暫定的な養育費の金額が最終決定額よりも少なかった場合には、非監護親に未払分の養育費の支払義務が課せられることが多いですが、支払いがなされるまでの間は、当然ながら監護親の元にはお金が入ってきません。
そのため、離婚協議書を公正証書にしておくことがポイントです。
公正証書は、公証人と呼ばれる専門家に作成してもらう公的な書類です。非監護親が養育費を支払わない場合に備えて強制執行認諾文言を入れた公正証書を作成しておくことで、すぐに給料などを差押えることが可能となります。
強制執行認諾文言のある公正証書を作成していない場合には、養育費の滞納が発生しても直ちに強制執行はできず、家庭裁判所に調停申立てを行わなければならないので、注意しましょう。
(参考記事)離婚協議書の作成方法を解説。記載事項やひな形も紹介
2-3. 話し合いで決まらなければ「調停」もしくは「審判」となる
夫婦間で話し合っても決められない場合は、調停か審判で取り決めを行います。
まずは、家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員とともに離婚時に話し合うべき内容や養育費について取り決めます。
調停委員はどちらの味方をするわけでもなく、中立な立場で話し合いのサポートをしてくれます。
調停で話し合いが成立しなければ、次は審判へと進みます。審判の場合は、裁判官が養育費に関する決定を出します。また、裁判所に離婚訴訟を提起し、養育費についても離婚と同時に取り決めてほしいと申し立てることもできます。
家庭裁判所を通しているので、離婚調停や審判・裁判で決まった養育費は法的な効力をもっています。そのため、もし養育費の支払いがされなかった場合、給料などを差押えできる強制力があります。
3. 取り決めた支払期間が変わるケースはあるのか

養育費は基本的に同じ金額を支払い続けることになり、金額が変更されることはありません。しかし、状況によっては、一度取り決めた養育費の支払期間が変更となる場合もあるのです。
たとえば、子どもの進学や就職、病気などがあります。こちらでは、どのようなときに支払期間が変わるのかについて紹介します。
3-1. 成人になる前に就職した場合
公正証書に「満20歳まで」と記載されている場合、子どもが高校卒業後に就職したら養育費の支払いはどうなるか気になる人もいるのではないでしょうか。
子どもが高校卒業後に就職した場合、就職後に経済的に自立ができれば親の扶養が必要ないと考えられ、支払い終了となるケースもあります。
しかし、就職をしたとしても、養育費を自動的に支払わなくてもよくなるわけではありません。
養育費の減額もしくは免除についても、監護親と非監護親が話し合って決めることですが、話し合いがまとまらない場合、養育費減額もしくは免除の調停を申し立てなければなりません。
また、就職したとしても経済的に自立できていないと判断された場合は、養育費を引き続き支払い続ける義務があります。
3-2. 大学に進学した場合
4年制大学に進学した場合、20歳になった時点ではまだ学生で経済的な自立をしているとは言えません。
そのため、両親がお互いに合意すれば大学卒業(22歳の3月)まで養育費の支払いが継続されるケースも少なくはないのです。この場合、両親の話し合いで合意すれば問題なく養育費の支払いが継続されます。
しかし、養育費を支払う側としては、少しでも額を減らしたいと考えるものです。合意しなかった場合は、家庭裁判所の調停で親の学歴・職業・資力・子どもの希望と親の意向などを考慮したうえで大学進学へ進むほうが良いと判断された場合、養育費の継続が決まるケースもあります。
成年年齢の引き下げの問題もあるため、大学へ進むことを考えている場合は、養育費の支払期間を決めるときに何歳の何月までと細かく決めておくほうが安心です。
3-3. 養育費の取り決めは状況に応じて変更が可能
民法880条には「扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し」について記載されています。
「扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる」となっているので、状況に応じて変更できるのです。
ただし、まずは両親で養育費の変更について話し合うことが重要です。話し合っても合意することができなければ、調停で話し合うことになります。
養育費の金額についても、支払っている間であれば何度でも変更を求めることが可能です。状況によっては、養育費の増額を求めることもできます。また、失業などを理由に養育費の減額を相談されるケースもあります。
こういった場合、その都度、話し合いをして決めることになります。
しかし、話し合いがまとまらなければ、養育費について最初に取り決めしたときのように調停・審判を行うことも可能です。
4. 養育費の支払いが止まるリスクを回避する方法

養育費は一括もしくは分割で支払うことになりますが、分割にした場合、支払い側の事情などで支払いが止まってしまうケースもあります。
滞納された場合、状況によっては生活にも影響がでるため、できるだけそうなることは避けたいものです。電話などで直接連絡をとって催促しても、きちんと支払ってもらえないことも少なくありません。
そこで、こちらでは養育費の支払いが止まるリスクを回避するための方法について紹介します。
4-1. 公的証書に強制執行に関する文言を追加しておく
養育費の取り決めを記載した公的証書を作る際、「強制執行認諾文言」をあらかじめ追加しておくことは有効です。この条項を追加しておくことで、家庭裁判所で調停をする必要がなくなります。
「強制執行認諾文言」には裁判所を通さず、養育費の支払いをしてもらうために財産の差し押さえをできる効力があるのです。
財産とは、給与や預貯金などをさします。
たとえば、養育費の支払いが遅れている旨を直接伝え、数日中に支払うと口約束しても支払ってもらえなかったとします。そういうときには、強制執行認諾文言が入った公正証書により、給与や預貯金などから滞納している分の養育費を支払わせることが可能です。
「強制執行認諾文言」がない場合や養育費について記載した公的証書自体がない場合、養育費の支払いが滞納していたとしても諦めてしまうケースが少なくありません。本来ならば養育費は取り決めをしたものであり、必ず受け取れるものなので、諦めてしまうのはもったいないです。
そうならないように、前もって対策しておくことは非常に重要です。
4-2. 養育費保証サービスの利用を検討する
養育費の支払いがストップするケースに備えて、「養育費保証サービス」の利用を考えるのも1つの方法です。
前述の同厚生労働省の調べによりますと、現状として、養育費を受けたことがない母子世帯は56%もあります。また、養育費の支払いを受けたことがあっても、途中で支払われなくなったケースが約39%となっています。
途中で支払われなくなる理由は、再婚による経済状況の変化や病気・リストラ、うっかり入金を忘れて、その後の催促がないとそのまま支払わなくなる場合などです。
未払いが発生したとき、養育費の支払いを催促したくても自分から元パートナーへの連絡はしにくいものです。イントラストの養育費保証を利用していれば、立替金はイントラストの債権として回収するため、利用者が直接元パートナーに連絡をする必要がありません。
それに、最大12カ月分の養育費を立て替えてくれるので、養育費を受け取れなくなることがないのです。
債権の回収に関しても無理な催促はせず、カウンセリングしつつ、支払いを促すといった流れになります。
イントラストの養育費保証を利用するためには、公正証書や審判書・調停調書・離婚協議書や合意書など、養育費の取り決めをした書面の用意が必要です。
また、契約の際には事前審査がありますが、その後、契約書類の返送や、初回の保証料を支払うなど、1~2週間ほどで手続きは完了し、保証開始となります。
イントラストは個人情報などもしっかり守り、安全に利用できるようにプライバシーマークを取得しているので安心です。

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(まとめ)何歳まで払うか、子どものためにもきちんと取り決めよう

養育費の支払い義務には時効があります。話し合いの場合で5年、調停や裁判で判決がでたものに関しては10年です。
例えば、毎月末に養育費を支払うと話し合いで取り決めたものの、2019年1月分が未払いとなった場合、2024年2月1日には時効が成立し、支払い義務がなくなってしまうのです。
一括で支払う場合を除き、支払いがストップしてしまうケースもあるため、金額・何歳まで支払うか・大学へ進学した場合・そのほかの事項についてもできるだけ細かく決めておくほうが良いでしょう。
また、養育費は口約束や離婚協議書内に書かれているだけではすぐに強制執行を行うための法的効力がありません。必ず、公正証書などにしておくほうが安心です。
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